【空き家になる前に】親の家を売るベストタイミングとは?損しないための税金・手続き
2026年01月16日
親の家を売るベストタイミング:いつが有利?
親が高齢になり、実家が空き家になる可能性が出てきたとき、その売却タイミングは非常に重要です。適切なタイミングを選ぶことで、管理負担の軽減だけでなく、税金面でも有利になる可能性があります。ここでは、主に「親が元気なうち(施設入居時など)に売却するケース」と「相続が発生した後で売却するケース」の2つのタイミングについて、それぞれの特徴とメリット・デメリットを解説します。
親が施設に入居するタイミング(生前売却・生前贈与)
親が介護施設へ入居する、あるいはまだお元気なうちに、将来の空き家化を見越して実家を売却することを「生前売却」と呼びます。また、売却ではなく、生前に子どもへ家を贈与する「生前贈与」という選択肢もありますが、贈与税やその後の売却にかかる税金を考慮すると、一般的には生前売却の方がメリットが大きいケースが多いです。生前売却は、親の意思が明確なうちに手続きを進められるため、後々のトラブルを避けることにもつながります。
生前売却のメリット
親の家を生前売却することには、複数のメリットがあります。
- 不動産価値の維持
空き家になってしまうと、管理が行き届かずに劣化が進み、不動産価値が下がる可能性があります。生前売却であれば、価値が高いうちに売却できる可能性が高まります。 - 管理負担の軽減
親が施設に入居したり、遠方に住んでいたりする場合、空き家になった実家の管理は大きな負担となります。生前売却によって、その負担から解放されます。 - 「居住用財産の3,000万円特別控除」の適用可能性
親が住んでいた家を売却する場合、「居住用財産の3,000万円特別控除」という特例が適用できる可能性があります。これは、売却益(譲渡所得)から最大3,000万円を控除できる制度で、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。ただし、適用には複数の要件があります。 - 相続税対策としての効果
売却によって現金化された財産は、相続時に分割しやすくなります。また、不動産を所有し続けるよりも、計画的に相続税対策を進めやすくなる場合があります。 - 親の意思を反映
親が元気なうちに売却を進めることで、親の希望や意見を直接反映させながら、売却条件などを決めることができます。
生前売却の注意点と親が手続きできない場合
生前売却には多くのメリットがある一方で、いくつかの注意点もあります。最も重要なのは、不動産の所有者である親自身が売却手続きを行う必要があるという点です。売買契約の締結や登記手続きには、親本人の意思能力と署名・押印が求められます。
もし親が認知症などで意思能力を喪失している場合、原則として親自身が売却手続きを行うことはできません。このような状況では、以下の制度の活用を検討する必要があります。
- 成年後見制度
認知症などにより判断能力が不十分な方を法的に保護し、代理で財産管理や契約手続きを行う制度です。家庭裁判所に申し立てを行い、成年後見人が選任されます。しかし、成年後見人は本人の財産を「守る」ことが主な目的であるため、居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要となり、手続きに時間がかかることや、売却が認められないケースもあります。 - 家族信託
親が元気なうちに、信頼できる家族(通常は子ども)との間で「信託契約」を結び、親の財産(実家など)を子どもに託し、管理・処分を任せる制度です。親が認知症になった後でも、あらかじめ定めた契約内容に基づいて子どもが実家を売却できるようになります。成年後見制度に比べて柔軟性が高く、スムーズな財産管理・処分が可能ですが、専門的な知識が必要となるため、弁護士や司法書士などの専門家への相談が不可欠です。
これらの制度は、親の判断能力が低下する前に準備しておくことが重要です。
相続が発生した後
親が亡くなり、実家が空き家になった後に売却を検討するケースです。この場合、実家は相続財産となり、相続人が売却手続きを進めることになります。相続後の売却は、相続税の申告や遺産分割協議など、相続手続きと並行して進める必要があるため、生前売却とは異なる注意点やメリット・デメリットが存在します。
相続後の売却のメリット(取得費加算など)
相続後に実家を売却する場合には、以下のようなメリットや特例が適用される可能性があります。
- 「相続税の取得費加算の特例」の適用
相続によって取得した不動産を、相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売却した場合、支払った相続税の一部を不動産の取得費に加算できる特例です。取得費が増えることで、売却益(譲渡所得)が減少し、結果として譲渡所得税の負担を軽減できます。この特例の適用には、相続税を納めていることなど、いくつかの要件があります。 - 遺産分割の一環
相続人同士で不動産の公平な分割が難しい場合、売却して現金化することで、遺産分割協議を円滑に進めることができます。
相続後の売却の注意点(3000万円特別控除の要件)
相続後の実家売却では、特に税制上の特例適用に関して注意が必要です。
- 「相続した空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」の要件: 親が住んでいた家を相続し、一定の要件を満たして売却した場合、売却益から最大3,000万円を控除できる特例です。しかし、この特例の適用要件は非常に厳しく、以下の点が特に重要です。
- 被相続人が一人暮らしだったこと: 亡くなった親が一人で住んでいた家屋である必要があります。
- 耐震基準の適合: 売却する家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたものである場合、売却時までに耐震リフォームを行うか、家屋を取り壊して更地で売却する必要があります。
- 家屋の解体: 家屋を解体して更地で売却する場合、相続開始から売却までの間に、その家屋で事業を行ったり、賃貸したりしていないことなどの要件があります。
- 売却期間: 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却し、かつ、その売却が相続税の申告期限から3年以内に行われる必要があります。
- 売却金額の上限: 売却価格が1億円以下であること。
- 所有期間による税率の違い: 不動産の売却益にかかる譲渡所得税の税率は、所有期間によって異なります。相続した不動産の場合、所有期間は被相続人がその不動産を取得した日から計算されます。所有期間が5年以下であれば「短期譲渡所得」として高い税率が適用され、5年を超えると「長期譲渡所得」として低い税率が適用されます。このため、売却タイミングによっては税負担が大きく変わる可能性があるため注意が必要です。
これらの特例は、適用できるか否かで税負担が大きく変わるため、事前に税理士などの専門家に相談し、適用要件をしっかりと確認することが重要です。
不動産売却にかかる税金と適用できる特例
親の家を売却する際には、さまざまな税金が関係してきます。これらの税金の種類や、利用できる特例を事前に理解しておくことで、手元に残る金額が大きく変わる可能性があります。ここでは、不動産売却にかかる主な税金と、適用できる特例について詳しく見ていきましょう。
譲渡所得税とは?(短期・長期の違い)
不動産を売却して得た利益は「譲渡所得」と呼ばれ、これに対して課されるのが「譲渡所得税」です。譲渡所得は、売却価格から取得費(購入費用や建築費用など)と譲渡費用(仲介手数料など)を差し引いて計算されます。
譲渡所得税の大きな特徴は、不動産の所有期間によって税率が大きく異なる点です。
- 短期譲渡所得: 不動産を所有した期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、税率が高く設定されています。
- 長期譲渡所得: 不動産を所有した期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」となり、税率が低く設定されています。
また、2037年までは、所得税額に対して2.1%の「復興特別所得税」が加算されます。
譲渡所得税の税率は以下の通りです。
| 所有期間 | 所得税率 | 住民税率 | 復興特別所得税 | 合計税率 |
|---|---|---|---|---|
| 5年以下 | 30.63% | 9% | 0.63% | 39.63% |
| 5年超 | 15.315% | 5% | 0.315% | 20.315% |
売買契約書には印紙税も必要となるため、これらの税金も考慮に入れておきましょう。
適用できる主な税制特例
不動産の売却では、要件を満たせば税負担を軽減できる様々な特例が用意されています。主な特例は以下の通りです。
- 居住用財産の3000万円特別控除: マイホームを売却した際の譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。
- 相続した空き家に係る譲渡所得の3000万円特別控除: 相続により取得した空き家を売却した際の譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。
- 取得費加算の特例: 相続税を支払った不動産を一定期間内に売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例です。
これらの特例は併用できない場合や、厳しい適用要件があるため、事前にしっかりと確認することが重要です。
居住用財産の3000万円特別控除
親が実際に住んでいた家屋(マイホーム)を売却する場合に適用される可能性のある特例が、「居住用財産の3000万円特別控除」です。この特例を利用できれば、譲渡所得から最高3,000万円までを控除できるため、税負担を大幅に軽減できます。
主な適用要件は以下の通りです。
- 売却した家屋が、売主が居住していた家屋であること。
- 売却した年の前々年、前年、またはその年に、この特例や他の特定の特例(特定の居住用財産の買換え特例など)の適用を受けていないこと。
- 親子間や夫婦間など、特別な関係がある者への売却ではないこと。
親が施設に入居した後や亡くなった後に売却する場合でも、一定の期間内であれば適用できるケースがありますので、専門家への相談が不可欠です。
相続した空き家に係る譲渡所得の3000万円特別控除
相続によって親の家を取得し、それが空き家となった場合、「相続した空き家に係る譲渡所得の3000万円特別控除」が適用できる可能性があります。この特例は、相続人が空き家となった実家を売却する際に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる非常に有利な制度です。しかし、適用要件が非常に厳しいため注意が必要です。
主な要件は以下の通りです。
- 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること。
- 売却価格が1億円以下であること。
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること(旧耐震基準の建物)。
- 相続の直前まで被相続人(親)が一人で居住していたこと。
- 売却する家屋は、相続時から売却時まで事業用や貸付用として利用されていないこと。
- 売却方法に関する要件:
- 家屋を取り壊して更地として売却する場合。
- 家屋をそのまま売却する場合でも、買主が耐震リフォームをして居住する場合(新耐震基準に適合させること)。
これらの要件をすべて満たす必要があるため、相続した空き家の売却を検討する際は、税理士や不動産会社に相談し、適用可否を慎重に判断することが重要です。
取得費加算の特例
相続により取得した不動産を売却する際に、相続税の負担を軽減できるのが「取得費加算の特例」です。この特例は、相続税を支払った不動産を一定期間内に売却した場合に適用されます。
特例の概要は以下の通りです。
- 内容: 相続した不動産を売却した際にかかる譲渡所得税の計算において、支払った相続税のうち、その不動産に対応する部分を取得費に加算することができます。取得費が増えることで、譲渡所得が減少し、結果として譲渡所得税の負担が軽減されます。
- メリット: 譲渡所得税の節税効果が期待できます。
- 適用条件:
- 相続や遺贈によって取得した財産であること。
- その財産について相続税が課税されていること。
- 相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却すること。
この特例は、相続後すぐに売却を検討している場合に特に有効です。ただし、この特例と「3000万円特別控除」は併用できない場合があるため、どちらの特例がより有利になるかを慎重に検討する必要があります。
堺市での空き家活用事例と支援制度
堺市に実家があり、空き家の活用や売却を検討している方にとって、地域の支援制度や具体的な事例は非常に役立つ情報です。ここでは、堺市が提供する空き家に関する支援制度の概要と、実際の活用事例をご紹介します。
堺市空家等利活用支援制度とは
堺市では、増加する空き家問題に対応するため、「堺市空家等利活用支援制度」を設けています。この制度は、空き家の所有者やそのご家族が、空き家の売却、賃貸、解体といった利活用に関する悩みを解決できるようサポートすることを目的としています。
具体的には、堺市と連携する不動産事業者(相談パートナー)が、空き家の状況や所有者の意向を無料でヒアリングし、最適な利活用プランを提案してくれます。売却や賃貸だけでなく、リフォームやリノベーションによる再生、さらには解体後の土地活用まで、幅広い選択肢について相談が可能です。
また、空き家に関する問題は、不動産だけでなく、共有名義や相続、登記といった法的な側面が絡むことも少なくありません。このような複雑な問題に対しては、相談パートナーの不動産事業者が司法書士などと連携し、専門的なアドバイスを受けられる体制が整っています。これにより、所有者やご家族は安心して相談を進めることができるでしょう。
堺市での具体的な空き家活用事例
堺市内では、様々な空き家がこの支援制度を通じて有効活用されています。ここでは、その一例をご紹介します。
ある事例では、築年数が古く、住居と店舗が一体となった空き家がありました。所有者はこの空き家をどのように活用すべきか悩んでいましたが、支援制度を利用して相談パートナーに相談。結果として、建物の一部を解体してガレージスペースを確保し、残りの建物をリフォームして「ガレージハウス」として賃貸に出すという提案がなされました。
この提案に基づき、専門家のアドバイスを受けながら改修工事を実施。その結果、車やバイクが趣味の人にとって魅力的な物件となり、無事に入居者を見つけることができました。これにより、所有者は管理負担から解放されただけでなく、安定した賃料収入を得ることができるようになりました。
このように、堺市では単なる解体や売却だけでなく、空き家の特性を活かしたリノベーションや用途変更による新たな価値創造も積極的に支援しています。ご自身の空き家も、専門家と相談することで意外な活用方法が見つかるかもしれません。
実家売却をスムーズに進めるためのポイント
親の家を売却する際は、多くの専門知識や手続きが必要になります。特に税金や法律が絡むため、適切な専門家に相談し、計画的に進めることが大切です。ここでは、誰に相談すべきか、そして売却までの大まかな流れについて解説します。
誰に相談すべきか?
実家の売却を成功させるためには、状況に応じて適切な専門家を選ぶことが重要です。それぞれの専門家が持つ役割を理解し、賢く活用しましょう。
- 不動産業者(不動産会社)
- 役割: 不動産の査定、売却活動(買主探し、広告)、契約条件の調整、売買契約の締結サポートなど、売却実務全般を担います。
- 相談タイミング: 売却を具体的に検討し始めたら、最初に相談すべき相手です。複数の会社に査定を依頼し、信頼できる業者を選びましょう。
- 税理士
- 役割: 不動産売却で発生する譲渡所得税や相続税など、税金に関する相談や申告手続きをサポートします。3,000万円特別控除などの特例適用についてもアドバイスしてくれます。
- 相談タイミング: 売却によってかかる税金のシミュレーションをしたい場合や、特例の適用条件を確認したい場合、確定申告が必要な場合などに相談します。
- 司法書士
- 役割: 不動産の所有権移転登記手続きや、相続登記など、法的な登記手続きを行います。
- 相談タイミング: 売買契約が成立し、所有権を移転する際に必ず必要になります。相続が発生している場合は、売却前に相続登記が必要となるため、早めに相談しましょう。
- 弁護士
- 役割: 親族間での相続トラブルや、売買契約に関する法的な紛争など、法律問題全般に対応します。
- 相談タイミング: 相続を巡る親族間での意見の対立がある場合や、売買契約で法的なトラブルが発生した場合に相談を検討します。
売却までの大まかな流れ
実家を売却する際の大まかな流れは以下の通りです。この流れを把握しておくことで、スムーズに手続きを進めることができます。
- 情報収集と相談(1ヶ月〜)
- まずは、インターネットや書籍などで売却に関する基本的な情報を集めます。
- 次に、複数の不動産業者に査定を依頼し、売却価格の目安や売却方法について相談します。この段階で税理士に税金について相談するのも良いでしょう。
- 媒介契約の締結(1週間程度)
- 査定結果や担当者の対応を比較検討し、信頼できる不動産業者を選び、媒介契約(専属専任媒介、専任媒介、一般媒介のいずれか)を締結します。
- 売却活動(3ヶ月〜6ヶ月程度)
- 不動産業者が広告活動(インターネット、チラシなど)を行い、買主を探します。
- 購入希望者からの内覧対応も行います。
- 売買契約の締結(1週間程度)
- 買主が見つかり、価格や引き渡し条件で合意したら、重要事項説明を受け、売買契約を締結します。この際に手付金を受領するのが一般的です。
- 決済・引き渡し(1ヶ月程度)
- 残代金の受領と同時に、不動産の所有権移転登記手続きを行います。司法書士が立ち会い、手続きを進めます。
- 鍵の引き渡しを行い、売却完了となります。
- 確定申告(翌年2月〜3月)
- 不動産を売却した翌年に、売却益(譲渡所得)があれば、確定申告を行い、譲渡所得税などを納めます。特例を適用する場合も確定申告が必要です。
これらのステップを計画的に進めることで、実家売却のプロセスを円滑に進めることができるでしょう。
まとめ:空き家になる前に賢く判断しよう
親の家が空き家になる問題は、多くのご家庭にとって避けて通れない課題です。しかし、この記事でご紹介したように、適切なタイミングで行動し、税金や特例を理解することで、将来的な負担を大きく軽減し、より有利な形で売却を進めることが可能です。
生前売却、相続発生後の売却それぞれにメリットと注意点があり、ご家庭の状況によって最適な選択は異なります。特に、税制上の特例措置は複雑ですが、適用できれば大きな節税につながるため、積極的に活用を検討すべきです。また、親御様が手続きできない場合の成年後見制度や家族信託といった選択肢も視野に入れ、早めに専門家へ相談することが重要です。
空き家になる前に、または空き家になった後も、不動産は管理費や固定資産税といった維持コストがかかり続けます。大切な実家を負の遺産にしないためにも、この記事を参考に、早めの情報収集と行動を心がけましょう。信頼できる不動産業者や税理士、司法書士などの専門家と連携し、ご家族にとって最善の選択をしてください。